借地権を相続したら地主の承諾は要るのか 遺贈との違いと相続税の評価
借地権は相続財産になり、相続人がそのまま引き継ぎます。法律事務所の解説では、相続は賃借権の「譲渡」に当たらないため、地主の承諾は要らないとされています。承諾料を払う必要もありません。
注意したいのは、遺言で相続人以外の人に借地権を贈る場合です。この場合は譲渡と同じ扱いになり、地主の承諾が要るとされています。相続税では、借地権も路線価と借地権割合を使って評価します。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や税理士、司法書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月3日に確認しました。
相続に地主の承諾は要らない
民法896条は、相続人が亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐと定めています。借地権も、この「権利義務」に含まれます。

民法612条が地主の承諾を求めているのは、賃借権を「譲り渡す」場合です。みずほ中央法律事務所の解説では、相続は譲渡に当たらず、承諾は要らないとされています。地主が相続を理由に契約を解除したり、名義書換料を求めたりする根拠はないということです。
地代を払う義務や契約の条件も、相続人がそのまま引き継ぎます。相続人が複数いて遺産分割がまだなら、借地権は相続人みんなで持つ状態になります。誰が借地権を引き継ぐかは、遺産分割で決めます。
相続が起きたら、地主に連絡しておくと地代の支払い先の行き違いを防げます。これは承諾を求めるのではなく、契約の相手が変わったことを伝えるためです。伝える内容は次のとおりです。
- 借地人が亡くなったこと
- 借地権を引き継ぐ相続人の名前と連絡先(遺産分割の前なら、その旨)
- これからの地代の支払い方法
地主から名義書換料を求められても、相続を理由にした支払い義務はないと解説されています。言われるままに払う前に、専門家に確かめてください。
遺贈で受け取る場合の違い
遺言で財産を贈ることを遺贈といいます(民法964条)。遺贈には、財産の全部または一定の割合を贈る包括遺贈と、特定の財産を贈る特定遺贈があります。

みずほ中央法律事務所の解説では、扱いは受け取る人によって分かれます。
| 受け取り方 | 地主の承諾 |
|---|---|
| 相続人が相続する | 要らない |
| 相続人が遺贈・死因贈与で受け取る | 譲渡に当たらないとされる傾向 |
| 相続人以外の人が遺贈で受け取る | 譲渡に当たり、承諾が要る |
相続人以外への遺贈で承諾が要るとした例として、同事務所は東京高裁昭和55年2月13日の判決を挙げています。判決の原文は、裁判所の判例検索が保守中で確認できませんでした。
同事務所によると、地主が承諾しない場合は、例外的に裁判所へ承諾に代わる許可を求める道が認められるとされています。手続きの中身は借地権を売るときに地主の承諾は要るのかで扱っています。承諾料の目安は譲渡承諾料・名義書換料の目安と決まり方にまとめました。
特定遺贈は、受け取る人が放棄できます(民法986条)。包括遺贈を受けた人は、相続人と同じ権利義務を持ちます(民法990条)。遺言書に借地権が出てくるときは、どちらの遺贈かを専門家と確かめてください。
建物の相続登記を済ませる
借地の上の建物も相続財産です。法務省によると、令和6年4月1日から相続登記が義務になりました。

- 相続の開始と、不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する。
- 正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になる。
- 令和6年4月1日より前の相続も対象で、令和9年3月31日までに申請する。
- 遺産分割がまとまらないときは、相続人であることを申し出る「相続人申告登記」で義務を果たせる。
建物の登記は、借地権そのものを守る役目も持ちます。借地借家法10条1項により、借地人は自分名義で登記した建物を持っていれば、土地の新しい持ち主にも借地権を主張できます。底地が売られたときに備えて、建物の名義を実際の持ち主に合わせておくと安心です。
建物の今の名義は、法務局で登記事項証明書を取れば確かめられます。亡くなった人の名義のままか、さらに前の代の名義が残っていないかを見ておきます。前の代の相続登記が済んでいなければ、その分も手続きが要ります。登記の手続きは、司法書士に頼むこともできます。
相続税での借地権の評価
国税庁のタックスアンサーNo.4611によると、借地権は相続税の課税対象です。評価額は、更地としての価額(自用地価額)に借地権割合を掛けて求めます。旧借地法の借地権も、借地借家法の借地権も、同じ方法で評価します。
次の4種類は「定期借地権等」として、別の方法で評価します。
- 定期借地権(借地借家法22条)
- 事業用定期借地権等(同23条)
- 建物譲渡特約付借地権(同24条)
- 一時使用目的の借地権(同25条)
契約書で、自分の借地権がどれに当たるかを先に確かめてください。

借地権割合は、路線価図ではAからGの記号で示されます。
表は左右に動かして読めます。
| 記号 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
路線価図の説明では、「215D」は1平方メートルあたり21万5千円で、借地権割合60%を表すとされています。面積100平方メートルで考えると、自用地価額は2,150万円、借地権は1,290万円です。底地(貸宅地)は残りの860万円になります。実際には土地の形や道路への接し方による補正が入るため、これはあくまで考え方の例です。
財産評価基本通達27は、借地権の取引慣行がない地域では借地権を評価しないとしています。国税庁の底地の評価(No.4613)では、そうした地域の借地権割合を20%として計算します。
相続したあとの選択肢
借地権を相続したあとの道は、大きく分けて住み続けるか、手放すかです。

- 住み続ける。地代と更新の扱いは借地の更新料と地代の改定で確認できます。
- 借地権を第三者に売る。地主の承諾か裁判所の許可が要ります。
- 借地権を地主に売る、または底地を買い取る。底地を売る・買い取る・等価交換するで扱っています。
建て替えや大きな増改築には、契約の内容によって地主の承諾が要る場合があります。売るつもりでも、まずは相続登記と地代の支払いを途切れさせないことが先です。地代が止まると、契約解除の理由になりかねません。
相続した借地をどうするか決めかねているなら、借地に詳しい相談先で契約書と路線価を見てもらうと、選べる道が具体的になります。
出典
- 民法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 借地借家法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 国税庁 タックスアンサーNo.4611 借地権の評価 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4611.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.4613 貸宅地(底地)の評価 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4613.htm
- 国税庁 財産評価基本通達27(借地権の評価) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/06.htm
- 国税庁(路線価図の説明) https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm
- みずほ中央法律事務所(借地権の相続と遺贈の解説・2015年5月31日) https://www.mc-law.jp/fudousan/19159/
いずれも2026年11月3日に確認しました。遺贈の判例は裁判所の判例検索が保守中で原文を確認できず、法律事務所の解説から引いています。